雪崩から生還〜山岳事故に巻き込まれるリスクを考える

雪崩から生還〜山岳事故に巻き込まれるリスクを考える

割とショッキングな話ですが、つい先日、残雪が残る北アルプスに登山にいき、雪崩に巻き込まれました。
私たちのパーティ含め5〜7名が雪崩に巻き込まれましたが、全員の無事を確認でき大事に至ることはありませんでした。
こんな経験は人生で2度はしないだろうと思います。
今回の事故を風化させないため、ここでは雪崩(ひいては山岳事故)に巻き込まれる可能性が高まるリスクについて思うところを述べてみようと思います。

雪崩後のデブリ。湿った雪のため、少しでも埋まってしまうと圧力で潰されたり、窒息する可能性が高くなる。

パーティ内における実力差から生じるリスク

ガイド登山しかり、パーティ内で圧倒的な実力差がある場合には注意が必要です。
登山(または岩壁登攀)は経験がモノを言う世界です。
それは、足の運び方や補給の仕方、非常時の対応など、机上の知識だけでは不完全で自分で経験して初めて身につくものだからです。
登山においては、経験が浅いものは経験者に付き従うもの(盲信するもの)と思われがちですし、実際にそういうパーティが多いと思います。
故に経験が浅いメンバーが山行計画に関して気がかりな点があっても、経験者に意見できない(しにくい)状況になってしまいます。

経験先行型の選択から生じるリスク

先でも述べましたが、登山(または岩壁登攀)は経験がモノを言う世界です。
前述に加えて、シーズン以外におけるルートの状況は現代においてもSNSやwebでほとんど収集できないため、一度経験した人の情報がすべてになります。
(特に冬季のバリエーションの場合は昔の文献とか、 経験者の勘がすべてです)
しかしながら、山の環境は毎年、毎シーズン、もっと言えばその日の天候によって変動します。
過去に登攀できたルートだからと言って、今回も登攀できると考えるのは非常にリスキーです。

自分の命を人任せにしてしまうリスク

今回の事故で感じたことですが、自分が雪崩に巻き込まれる可能性が高いと事前に分かっていても、他人に責任を転嫁することでリスキーなことを実行できてしまいます。
今回は雨でかつ気温が高く、素人目に見ても絶好の雪崩条件でしたが、経験豊富なリーダの判断(おそらくKKD)のもと実行してしまいました。
前述した通り、パーティ内には実力差があったためにメンバーはリーダに強く意見を言えず、雪崩は起きるだろうけどまあ仕方ないかと思っていました。
これは今考えると異常なことです。
自分が死ぬかもしれない状況でも、他人に責任を転嫁することで実行してしまうのですから。
自分もそうでしたが、自分が死ぬかもしれない状況になったら我先に逃げるのが普通だと考えていました。
しかし、状況によっては他人への責任転嫁によって死を受け入れることになります。
自分の最後を自分で決められないのは情けないのですが、こういうことも起きてしまいます。

まとめ

今回の事故で登山におけるパーティのあり方を改めて考えるきっかけになりました。
もちろん雪崩には2度と遭遇したくありませんし、山岳事故自体に巻き込まれたくありません。
ただし、今回述べたようなことは、普通の登山においても起こり得ます。
山岳事故は起こりうるべくして起きます。
山で死にたくないのなら、死ぬかもしれないと頭によぎったタイミングで、頑張ってリーダに進言するとか、無理なら嫌われてもいいから自分だけでも引き返すとかそういう選択もアリだと思いました。